管理人からTS(性同一性障害)とTV(女装)の違いを説明する記事を書くよう依頼されましたので、書かせていただきます。ここではMTF(心は女性、体は男性)のTSに話を絞ります。
TSは、性同一性障害という病気で、男性なのに脳の構造が女性型だったり、女性型の思考回路が形成されてしまった、病変によるものであると理解しています。
姉や従妹の子供を見ていると、男の子と女の子は、1才になるかならないかの時点で、行動様式が全く違うことに驚かされます。女の子は男の子のような乱暴で奔放な動きをしたり周囲の子供やおもちゃを乱暴・攻撃的に扱うことがほとんどありません。脳みその構造が、生まれた時から違うのです。
もちろん、大人しい男の子もいますが、大人しい男の子の全部が女性脳を持っているわけではありません。ある統計研究では性同一性障害の出現比率は2,800人に1人としていますが、その10倍の比率で存在するという説もあります。仮に大目に見て200人に1人としても、0.5%という非常に低い比率なのです。
一方、TVは男性なら女装趣味、女性なら男装趣味ですが、女性は子供の時から洋服の自由度が高いのでこだわりが少なく特定も容易ではありません。男性はスカートをはきたい人がTVということになります。TVの人口比率についてはデータがありません。軽度のTV(一度スカートをはいてみたかったとか)を含めると、数名に1人とか、TSとは桁が違う出現率であると思います。
服装は社会的・後天的なものですから、脳に病変があるわけではありません。嗜好の問題であり、病気ではありません。
TS/TVと、混同されるのが、同性愛・異性愛です。
私の意見としては、同性愛・異性愛は、第二次性徴以前の段階では、社会的・後天的なものであると思います。TSの自叙伝で「小学校低学年の時から男の子が好きだった。」というのは多いですが、これは自分が本当は女の子だという意識により、「女の子が好きになるのは男の子なのだ」という意識が醸成されるのであり、脳みそが、男性を好きになるようにできているのではないと思います。(この点、別の意見もありますので、あくまでこれは私の説です。)
私は医者からTSと確定診断されたTSで、0.5%の不運を背負っているわけですが、大学生になるまでに、男の子を好きだと思ったことは一度もありませんでした。異性・同性だからどうとかいうのではなく、美しくて攻撃性の少ない存在に魅かれたのかも知れません。大学に進んだ後、TSと確定診断されてからは、明確に女性を同性と認識するようになったので、恋愛対象にはならなくなりました。(愛情の対象としてはまだ女性の方が男性よりはるかに好ましいです。)男性に性的衝動を少しでも感じるようになったのは、女性ホルモンの服用を開始してしばらく経過して以降です。
少し話がそれましたが、TVもTSも同性愛・異性愛はどちらでもあり得るもので、男が好きならTS、そうでなければTVというものではない、ということだと思います。
それから、TSは必ずTVかというと、少し違うと思います。TSが女装するのはコンフォート(違和感がなく安心できる状態)のためであり、TVは快楽のために女装するからです。私の場合は女装を急ぎません。最近は外出する時には思いっきり男性的な服装で出かけます。女性ホルモンを開始して半年ほど過ぎると、バストが目立つようになり、肌のトーンや脂肪分布が女性に近づくため、中性的な服装で出かけると、トイレで不審者のように見られるようになってしまったからです。(自宅や、親しい友人宅でくつろぐときには、ゆったりしたワンピなどを着ています。)いずれ、遠からず、フルタイムの女性として生活するようになるので、(そうなると女装しかできなくなる!)それ以前に無理に女装する必要はないと思っています。
TS/TVの区別の話で、「ニューハーフはどうなの?」と質問されることがあります。ニューハーフはTS/TVの区別とは無関係な、「職業」を表す言葉です。ニューハーフの多くはTSと思いますが、TVが高じてニューハーフになった人も沢山いるのではないかと思います。「玉なし」のニューハーフは99% TSのはずです。私はニューハーフになるつもりはない(多分)ですが、TSなのに「お前はニューハーフ」と言われることがあり、当初は傷ついていましたが、そのうち気にならなくなりました。TSは心と体の性が違い、男性だったはずが女性として生きていたら、ニューなハーフであることに違いはないからです。