「普通のテレビ番組で最近アダルト画像が平気で放送されている」という話で「モザイクジャパン」という日曜午後11時台の連ドラを何度か引き合いに出しましたが、昨夜モザイクジャパンの最終回(第5話)が放送されました。
AV会社を舞台にした物語を「Woman」の坂元裕二の脚本でTVドラマ化するということで、制作発表時からモザイクジャパンには非常に高い期待を持っていました。満島ひかり主演のWomanという連ドラをご覧になったでしょうか?わたしの友人の女性には「可愛そうで見ていられなくなったので見るのをやめた」という人がいたほど、真に迫った社会派ドラマで、ここ数年で最も印象に残った名作の一つでした。
モザイクジャパンではハマカワフミエという新人女優(舞台女優としては実績があり、現在世田谷の「小劇場楽園」でやっている「毒婦二景」で愛する男の局部を切り取ったことで有名な阿部定を演じているところ)がAV女優役で出演するとのことで、ハマカワフミエについても期待を持って放送開始を待ちました。
しかし、第1話は正直言って全くの期待外れでした。まず「R15+」の表示が大写し。15歳以上しか見てはならない、すなわち高校生はどうぞご覧くださいという意味です。永山絢斗が演じる主人公が東京の会社を辞めて故郷にUターンし、親の勧めでGALAXYZという会社に就職するのですが、勤め始めると次々と異常な出来事に遭遇し、アダルト事業を中心に色々な事業を手掛ける会社だったことが分かった、という設定。
この設定をドラマで表現しようとすると結構手間がかかり、第1話はその「設定の説明」に時間の大部分が費やされました。結構複雑な想定部分を30分番組(コマーシャルも入るので実質20分ぐらい)に詰め込むと、それだけで終わってしまい、ドタバタした印象だけが残りました。
また、普通の会社のオフィスをAV撮影の舞台にも使い、セクハラ・レイプのようなシーンが平気で放映されているのには驚きました。一般高校生男女が見ると結構インパクトがある(インパクトが強すぎる)と感じましたが、逆に良質な18禁を見慣れている我々が見るとレベルの低い安っぽいAVシーンという印象でした。
第2話のストーリーは、ギャラクシーズのFX部門に所属する主人公の理一(永山絢斗)が社長(高橋一生)の特命で、AV女優志願の女子高生2名をスタジオに送り届けると、理一の高校時代の恩師や友人男女がAVを演じていて、理一が「目を覚めしてくれ」と説得しても聞き入れられない。乱闘の末、気を失って、目が覚めたら裸でベッドに仰向けになっていて両手首には手錠が。翌朝社長室に呼び出され、「無修正AVの子会社を立ち上げるので、そこの社長をやれ」と言われる。というものでした。
主人公が乱闘の末、気を失って目が覚めたら裸で仰向けになっていて両手首には手錠がかかり、胸から下腹部には「活造り」の刺身が盛られていて、AV女優が理一の周囲に座って「活造り」を味わっている、というSM嗜好を狙ったシーンについては、このサイトで言うのは筋違いかもしれませんが、18禁以外で扱ってほしくないネタだなと感じた次第です。
登場人物のキャラクター(パーソナリティー)作りに深みが無く、特に注目のハマカワフミエの演じるAV女優兼OLの桃子は、「アイドルになるよりAV女優になる方が困難」という長いセリフをしゃべらせただけで、女性の存在として身近に感じられず、第1話同様、消化不良感がのこりました。
第3話は「今週こそは」と思っていう見ましたが、ハマカワフミエの桃子の重要性が高まり、無修正AV会社の社長になった主人公の部屋での桃子の内面が明らかになるのですが、「結局はどうなの」という発言をするので「理一が桃子のことをどう思っているのか、結婚を含めた二人の将来のことを語るのか」と思いましたが、「やるの、やらないの」という意味だったことがわかり唖然としました。 濡れない、とか、濡れたのは社長(高橋一生)とやった時だけだったとか、熱のこもった発言ですが心に響いてこない。学生映画のような感じで、更に不完全燃焼感が残りました。
第4話でのハマカワフミエ(桃子)は、普通にセックスをすると濡れない、濡れたのは親会社の社長とやった時だけ、AV女優であることが自分の存在の原点、と熱演し、やっと普通のドラマのレベルになって見ていられる感じになりました。
昨夜の第5話では、ハマカワフミエは永山絢斗への愛と、それでも感じない自分の肉体への葛藤、その感じない肉体を抱くときに永山絢斗が抱くであろう葛藤を見事に表現し、「やっとWomanの脚本家を起用した意味を見せてくれた」と納得しました。桃子が親会社の社長をベルトで本気で絞め殺そうとしたり、結局ひとりでZimbabweに渡航してバイトしたりと、荒唐無稽で速いテンポが、視聴者にとってやっと馴染めるようになりました。
「モザイクジャパン」というタイトルには製作者としては「最も重要なテーマ・意味」を込めているのですが、構成に無理があり、殆どの視聴者に理解されなかったと思います。
残念ながら、今回のモザイクジャパンは失敗に終わったと感じます。決して「駄作」ではありません。この設定で30分 x 5回という時間枠で、複数のテーマを視聴者に理解させ共感させるのが無理だったのです。折角の脚本家やハマカワフミエという有望な素材を使いながら、非常に惜しいと感じます。
特にハマカワフミエにはAV出演に近い露出度の演技をさせた上で、当初目標とした芸術性を出せなかったわけで、制作者から謝罪が必要ではないでしょうか。
30分x5回が諸悪の根源であり、1本の2時間映画にした方が、設定も理解しやすく、桃子の心が解き明かされる過程も分かりやすく描けたと思います。
このレビューの結論としては、敗者復活をこめた映画化を期待する次第です。